阪 十三にあるライブハウス[テハンノ]で私、TERAによるライブドロウが行われました。個人的によく行くライブハウスで、個性的なシンガーソングライターの皆さんが毎日入れ替わり立ち代わりで夕闇を音色鮮やかに彩ります。

 ある日そのライブハウスに自分の絵を置いてもらう事になりましたが、これがあまり評判よくなくて、どうしたもんかと考えていました。

 いつもと同じように全員の演奏が終わってから店長?の浅田(アサダ)さんとこんな事をしよう、あんな事をしようと話していました。ここで夢を語るのは、なぜか何よりも正しい事のように思えます。そんな時、前から気になっていた「ライブペイント」についての話になりました。ミュージシャンが演奏している間にアーティストが絵を描くというものです。音楽を聴きながら絵を描く事が多かった私は、生の音と緊張という環境で一発入魂の絵を描いてみたいと思っていました。まったなしの心境の描写です。

 じゃあやってみる?」という言葉に私は飛びつきました。そのあとで何に描くか、何でどう描くかなど具体的な道具を揃えていきました。イーゼルは折りたたみ式のバーゲン品です。成功させてもっといいものを買おう。そう決めて士気を高めていきました。

 色はパステルで付けよう、乾く時間がいらなくて広範囲に塗れる。即興で描くのに最適だ。ここはフンパツしてホルベインのARTIST'OIL PASTEL(オイルパステル)を使おう、これなら油絵のような濃厚な塗り込みもできる。肝心の黒色は素早くコントラストを表現できるように、極太のGraphitkreide (ドイツ製)9Bの鉛筆と、ヤナギ木炭など様々な特徴を持つ黒色を集めました。キャンバスはB3サイズのイラストレーションボードに決め、本番に備えました。

NO,1

〜無題〜

[music : 浅田 純平]

 日、本番30分前にテハンノの一番奥の席に陣取り、道具を広げていきました。演奏中に道具探しなどしなくてすむように、一番効率のいい置き方はどうか、など夢中で準備をしていたと思います。お陰で、その時掛けて頂いた周りの声はほとんど覚えていません。

 ボードをイーゼルに置いてすぐ1番目の演奏者「浅田純平」さんが話し始めました。テハンノをキリモリしている方です。「今日は後ろで絵を描く人がいてます〜」と紹介してもったものの、軽く頭を下げる事しか出来ないくらい緊張していました。間もなくギターのビリビリと震える空気が流れてきました。ここからは自分の心の赴くままペンを取るように心がけました。とにかく「何も考えるな、色を選ぶな、とにかく塗ろう」そればかり考えていました。どうしても構図など見栄えを良くしようと考えてしまうのを、押さえたかったのです。

NO,2

〜無題〜

[music : りんどう]

 その弾き語りにはベテランの魂がこもっていました。二人目は「りんどう」さんでした。遠くて懐かしい思い出のようで、まっすぐなはかなさが感じる。アコースティックギターが夕日のような音色を奏でます。

NO,3

〜無題〜

[music : 室津 敬一郎]

 今夜はベテランのミュージシャンばかりです。自分の父親と同い年くらいの方がほとんどです。室津さんもその一人。とても人柄の表れる曲調でした。ゆったりとした、レースのカーテンのよう。日曜の午後三時、そよぐかすかな風が、道ばたの花を撫でるように。でも、思いはただ一点を見つめている感覚。包まれます歌声に。

NO,4

〜無題〜

[music : 小林 たかよし]

 ゲストの方が応援に入り、迫力のバンド演奏がそのまま絵に表れました。ビーチサイドの夏の曲からチューニングをあえて狂わせてかき鳴らす爆裂ビートはおもわずトリップしそうでした。暑い太陽と広大なロマン、闘牛のような緊張と精神のぶつかり合い。何度も絵を上描きしていたのだけは覚えています。

夜はこれで終了です。約3時間の闘いでした。作品はどれも個性的で、自分の中からこんなビジュアルが出てくるとは思いもしませんでした。今までは、部屋にこもってエレクトロニカのBGMを流しながら精密な描写に夢中で、荒々しさとは無縁の世界だったからです。失敗など存在しません。どれもが、私の心の描写であり素直なビジュアルだからです。いいね〜、面白いね、という声が私の存在を認めてくれたような気がしました。目をウルウルさせながら感動してくれた方をはじめ、この場でみんなと唄のメッセージとイメージを共有できた事が最高でした。何かが誰かの心に届いたのをはっきりと感じれた夜でした。

 ちなみに今回の絵たちは、いまもテハンノにこっそり置いてあります。是非、探してみて下さい。あの時の興奮を垣間みる事ができるでしょう。

Infomation

ライブハウス テハンノ

〒532-0024 大阪市淀川区十三本町1-7-4 プラザパオ5F

浅田さんのサイト

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